10年後、55万人の人材不足?

2030年に従来型のIT人材が10万人余り、先端IT人材は55万人不足する。

そんな試算が、2019年4月に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」という報告書に書かれています。

経済産業省|IT人材需給に関する調査
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

これは、今からプログラマーとして働こうと考える人からすると、決して無視できない問題でしょう。
プログラミングを勉強するなら、10年後20年後も役立つスキルを学びたいと思うのが当然です。せっかく何十時間・何百時間と勉強したのに、そのスキルが数年経って使えなくなってしまうのは困ります。
将来にわたって、社会から求められる人材になるにはどうすれば良いか、ここでお伝えしていきましょう。

先端IT人材って何だ?

先端IT人材の不足イメージ

まず、「先端IT人材」とはどんなプログラマーを指すのでしょうか?
報告書で簡潔には定義されていないのですが、おおよそ以下のような人材とされています。

先端IT人材

第四次産業革命(AIやビッグデータ、IoTなど)に対応したスキルを持ち、新たな付加価値の創出や、革新的な効率化で生産性向上に寄与できる人材

難しい言葉が並びますが、簡単に言ってしまえば「AIなど新しい技術を使いこなして、新しいビジネスを作れる人!」のことです。
いまはまだ、先端技術を必要する市場は全体の1割程度で、従来の技術を必要とする市場が9割を占めています。

そのためまだ多くの人は、「AIだ人工知能だと言っているけれど、まだ1割程度しか需要ないしそんなにすぐは新しい技術に移り変わらないでしょ?」と思っているかもしれません。
しかし同調査では、なんとたった10年で先端技術の方が需要を増し従来のIT技術を必要とする市場は半分以下になると予測されているのです。

2030年までのプログラミング市場の予測グラフ

IT市場は10年で現在の約120%に増加しますが、内訳は先端IT技術6割:従来IT技術4割になる想定されています。
それが「2030年に従来型のIT人材が10万人余り、先端IT人材は55万人不足する。」の言葉の意味です。

AI時代に生き残るプログラマーとは

AI時代に取り残されないためのプログラミングスキルとは?

では、10年後も必要とされるプログラマーになるには、初心者でもAI技術から勉強を始めれば良いのでしょうか?私はそうは思っていません。その理由は下記の2つです。

現時点では、まだ需要が少なく高い技術力が求められる。

学習コストが非常に高い。

AI技術はまだ需要が少ない

高いAI技術のイメージ

先に書いたとおり、まだAIなど先端技術の需要は、市場全体の1割程度です。
それもまだ研究段階で、どうすれば新規導入できるか、ビジネスとして採算が取れるか、と試行錯誤が続いている状態です。

優秀なエンジニア達が少数精鋭で、日夜移り変わる技術を追いながら探求している世界に、あなたはいきなり入っていけるでしょうか?

強い好奇心と努力があれば決して無理なことではありませんが、従来の技術を仕事にするよりも困難なことに間違いありません。
当然これから需要が増していく技術ですので、常に動向を追うことは大切ですが、多くの初心者がいきなり入っていける業界とは言えません

学習コストが非常に高い

AI技術の学習コストを試算

また、発展途上の技術ですので学習コストも非常に高いです。
当然、学習教材も従来の技術に比べれば少ないですし、現時点では一番効率的だ、とされていた手法がたった数ヶ月後には変わっているのも当たり前な世界です。
ベースとして必要な技術は変わりませんが、常に新しい情報をキャッチし続けていく必要があります。

またいま現在、世界でAI技術に力を注いでいるのはアメリカと中国の二大国家です。そのため新しい情報の多くは自然と、英語で中国語となります。

日本語の情報でも、新しい画期的な手法が登場した、程度の概要なら見つけられますが、詳細な情報を追うには海外の文献を読まなければいけません
さらに、より詳しく技術的な理解をするには、数学や統計など理系大学レベルの基礎知識が必要です。最近、プログラミングスクールの宣伝文句には、「文系でもプログラマーに!」と書かれることが多いですが、最新技術はやはり理系知識のある人が有利なことに変わりはありません。

そんな先人達が、地ならしをしてくれているからこそ、従来型のIT市場では多くの人が当初よりも容易にスキルを身につけられるのです。
AIも研究が進むほど、日本語の情報も増え、学習コストが下がっていくと思われますが、今はまだその状態とはいえません。

AI時代に生き残れるエンジニア戦略

それでは、まとめに入っていきましょう。

10年後には、AIやビッグデータ、IoTなど先端IT技術を必要とする市場が全体の半分以上を占める。

しかし、現状まだ先端IT技術の需要は1割程度。

先端IT技術を学ぶコストは、まだとても高い。

という状況を見て、いまからプログラミングを学ぼうと思う人はどんな戦略を取るべきでしょうか?
最初に取ると良い戦略は、「需要があり、学習コストが低いコスパのよい従来のIT技術を学び、まずは基礎力を身につける」ことです。新しく高度な技術を、初心者がいきなり学ぶのは困難です。
数年後、徐々に需要が減っていくにしても、まずは今現在まだ採用されやすいスキルと、プログラマーとしての基本を身につけましょう

AIを始めとした、5年後10年後に必要なスキルを学ぶのは、基礎が身についたあとで大丈夫です。基礎が身につき、AI技術を学ぶ方法が今よりも容易になった段階で身につけた方が効率的でしょう。

技術はあくまで道具に過ぎません。

最先端の調理器具がなくても、包丁やフライパンがあれば料理は可能です。まずは簡単な道具で、お客さんがどうすれば喜ぶのか知りましょう。
複雑な道具を使えても、ユーザーや顧客の要望を叶えられなければ意味がありません。今風なイケてる技術を身につけることだけを目的とせず、顧客満足を重視できる人材は10年後だけでなく、それから先もずっと生き残れるのです。